ブラックホール一歩手前

　ああ僕はブラックホールに落ちそうだ。
勇気の灯が燃え尽きそうだ。
アメリカの高層ビルが破壊された。
　僕の方もきれいに打ち砕かれた。
この心身をどう支えればいいのか。

待てよ。もっと、しんどい光景を見たぞ。
朔太郎の「氷島」の帰郷という詩だ。
彼は耐えたんだ、必死で耐え抜いたんだ。
あんなつらい状況を生き抜いたんだ。
甘い考えは捨てよう。

大正の時代にあれ程の感覚鋭き人がいたなんて
東京に生き、群馬に生きた、悩める放浪の詩人。

　現代、これほど明るい歌に包まれた部屋に居ても、
ふと、淋しげなエアポケットに入る時がある。

大正の放浪詩人よ、君は現代に生きている。
時々、自分のスペースに、トカゲのように現れる。

　いつかの枯野も、希望の黄金の時を得たり。
君は、永遠たる詩の金字塔を打ち立てたり！